デジタルビジネスへの道筋を描く構造的アプローチ

自社事業を支える「プラットフォーム」、「アプリケーション」、「プロセス」が柔軟性と適応性に優れ、デジタル化計画に即時着手できるという確信を与えてくれる、デジタル・トランスフォーメーションに向けた構造的アプローチ

はじめに

デジタル時代のプラットフォーム、アプリケーション、プロセスが、あらゆる業界の企業や組織の戦略シナリオを書き換えようとしていることは疑う余地がありません。ガートナー社による最新調査によると、「デジタルビジネスが、技術革新の発展や新規テクノロジーの台頭に拍車をかけている」ことに72%のIT企業が同意しており、デジタルビジネスへの支出は平均して企業収益の11%以上にのぼっています1)。

このようにリスクリターンの大きい状況下では、スピードが決定的に重要な意味を持ちます。同時に、その根底にあるビジネスニーズの正当性も証明しなければなりません。総合的なアナリティクスを行わなければ、企業を支えるレガシープラットフォームやエンタープライズ・アプリケーション、ビジネスプロセスが損なわれてしまう可能性があります。特にデジタル・トランスフォーメーションの初期段階では複雑さが増すだけでなく多くの時間も要し、結果として従業員とバックエンド/フロントエンド・システムの分断も招きかねません。またトランスフォーメーション本来の目的が見失われてしまうこともあります。スケジュールや予算から逸脱することなく機能要件を定義し、同時にビジネスユーザー、協力会社、消費者の期待にも応えようとするあまり、不確実な状況を生み、プロジェクトチームにさらなるプレッシャーを与えることになるのです。

こうしたリスクを回避するには、次に挙げるポイントについて各社で自問自答しておく必要があります。

・自社のデジタル・イニシアティブ(変革)に取り組む上で最善の方法とは何か?
・プロジェクトの遅延を回避し、機能的ギャップを埋め、起こり得る予算超過に対処するための十分な対策を講じているか?

デジタル・イニシアティブにおける失策や資金難の原因とは何か?プロジェクトが定める予算やタイムラインを厳守しながら、IT戦略と事業戦略の目標をどちらも達成したいと考える企業にとって、段階的なアプローチがいかに役立つのか?本ホワイトペーパーで詳細に解説します。

デジタルジャーニーへの旅立ち

どのプラットフォームやアプリケーションからデジタル化に着手すべきか、パフォーマンス・ベンチマークをどう設定すればよいか - 多くの企業がデジタル・イニシアティブを推し進める中でさまざまな課題に取り組んでいます。こうした企業に対し、当社は構造化された4段階アプローチをご提案します。本アプローチを通してさまざまな問題を回避できるだけでなく、より一層のスピードと正確さで期待通りの成果を引き出します。

1. アプリケーション・ランドスケープの理解

デジタル・イニシアティブのスコープ設定時にプロジェクトチームがよく犯しがちな誤りは、最終消費者に直接つながるアプリケーションに対象を絞り込んでしまうことです。ここで見過ごされているのは、顧客体験全般をサポートしながら情報を伝えているバックエンドシステムやレガシーシステムへの影響です。

企業がアプリケーション・ランドスケープを完全に理解するためには、基幹業務アプリケーション および ビジネスプロセス関連システムを踏まえた上で、現行IT環境のベースライン評価を行なう必要があります。長・短期的ビジネス目標に対応する中で、これらのIT資産がどのように連携し相互に影響し合っているか、プロジェクトチームは本ベースライン評価を通してこうした知見を深めることが可能となるのです。

次に重要なのは、デジタル化の着手に先立ち社内のあらゆる部署(IT部門から人事部に至るまで)でデジタルビジネスへの転換に備えておくことです。イニシアティブの対象を広げ過ぎずレガシーシステムの限界を確実に調査できるよう、十全なメカニズムとチェックポイントを設定しなければなりません。

こうした課題に対処できるよう、当社はデジタルアプリケーションを導入するためのトップダウン・アプローチを提案しています。本アプローチはまずビジネスプロセスから着手し、その後エンタープライズアプリケーションやインフラへと掘り下げていくものです。この手法を通してIT部門と業務部門の目標のすり合わせを可能にし、顧客体験に直接的な効果をもたらします。

コグニザントのデジタル・レディネス・フレームワークは、この後述べる「デジタルアセスメントの実施」と「デジタル・レディネス・インデックス(DRI)の作成」を通してデジタル・イニシアティブの現状を評価し、企業のデジタルジャーニーを確かな方向へと導きます。

2. デジタルアセスメントの実施

当社では、デジタル・イニシアティブの一翼を担うアプリケーションやビジネスプロセスについて将来的な構想を膨らませておくことを企業各社に推奨しています。そのためには、現行アプリケーション環境の構造的アセスメントが不可欠です。本アセスメントを通して以下のタスクを実施します。

・自社にとって極めて重要、かつデジタル化の候補にも挙がっているビジネスプロセスを特定
・特定されたビジネスプロセスと現行のバックエンド/フロントエンド・アプリケーションをマッピング
・多種多様なビジネスプロセス および サードパーティ製アプリケーションにまたがるインターフェースをチェック
・特定のビジネスプロセスやアプリケーションに精通した社外サービスプロバイダを活用して、各プロセス領域の複雑度を判定
・デジタル化構想が、全体的な業務環境 ならび 社内データフローに即したものであることを確認
・デジタル関連プロジェクトの優先順位付けに役立てられるよう、顧客/エンドユーザーから情報を収集

3. デジタル・レディネス・インデックス(DRI)の作成

前述した「アプリケーションランドスケープの理解」と「デジタルアセスメントの実施」に基づきデジタル・レディネス・インデックスを作成し、各企業におけるデジタル・イニシアティブの重点分野を確認することができます(図1参照)。
適応性:短期間でのアプリケーション改修に必要な柔軟性と保守性
業種特化性:アプリケーション および プロセスの業種特化性
安全/準拠性:アプリケーションが法規制やセキュリティ基準を満たし、新規要件に対して迅速かつシームレスに対応できているか
ゼロ・メンテナンス:アプリケーション保守費用の削減により業績を改善し、フールプルーフ(ヒューマンエラーに耐え得る状態)に到達できるよう工数/作業量の軽減に注力しているか
インテリジェント・アナリティクス:有用かつ適切な情報に変換可能なデータの量とスピードが劇的に高まっているか
ユーザーエクスペリエンスの優位性:顧客サービスや顧客体験を「高度にパーソナライズ」できるデジタルアプリケーションが、多種多様なチャネル/デバイスを介して活用されているか
Anytime Anywhereアクセス:単一チャネルからマルチチャネル環境へユーザーを移行するために不可欠な要件
スマート・ビジネスプロセス:企業の現行ニーズに応じてビジネスルールやワークフローが設定可能か。また、IT部門が単独で変更管理に対応するのではなく、ビジネスユーザーもこれらのプロセスを管理できるか

上記のように定義された各パラメータにその重み付けを割り当てると、ビジネスプロセスレベルでのデジタル・レディネス・インデックスが算出されます。それに応じて、サブプロセスも集計可能です。

4. デジタルプロジェクトの優先順位付け

デジタル・レディネス・インデックスは、デジタル化しやすいプロセスとそれが困難なプロセスについての合理的な示唆を企業に提示してくれるものです。しかしながら、このインデックスは単なるチェックリストに過ぎません。業務上の優先事項(およびデジタル化が企業にもたらすと期待される価値全体)を検討した上で、5段階尺度(Tier1 = 最高優先度、Tier5 = 最低優先度)でプロセスを分類する必要があります。

ここで重要なのが、デジタル化計画(ロードマップ)の策定です。たとえば、ある企業ではデジタル化の対象としてあまり困難を伴わないプロセスを選択するかもしれません。その一方で、デジタル化に多少手間がかかったとしても、顧客にとって絶対不可欠な基幹アプリケーションのデジタル化推進を選ぶ企業もあります。

デジタル・モメンタムの維持

企業がデジタルビジネス化を進めるにあたっては、多額の投資が必要となります。それに加えて、レガシーシステムの迅速かつ的確なモダナイゼーションなど、数多くのプロジェクトを引き受け遂行しようとする積極的な姿勢も求められます。デジタル準備性を保証するだけでなく、最適なレベルのデジタル化を実現・維持していくことも重要です。当社のデジタル・レディネス・フレームワークは、図2に示すような4段階プロセスを用いてデジタル・バリューチェーンにおける成熟度レベルの向上を支援します。

(案件事例)連携強化とチャネルの拡大

某グローバル製薬会社は、医療関係者や消費者とのより良い関係を築き、彼らのロイヤルティを長期的に維持することによって、マーケティング対象をさらに拡大していくことを検討していました。同社はインターネットを介して患者、医師、介護士に健康志向や医薬品に関する情報提供を行ってはいたものの、製薬業界固有の課題に直面していました。より専門的な医学誌や研究資料を求める医療関係者向けの情報はオンラインで提供されておらず、同様に病院、医師、医療保険、処方薬に関する患者向けの情報にも対応できていないのが実情でした。同社には医師や患者とコミュニケーションを図るためのプラットフォームが存在せず、そのマーケティング対象を消費者まで拡大できる範囲は限られたものでした。

コグニザントは、同社で行ったデジタルアセスメントをもとにトランスフォーメーション・ロードマップを作成し、重点的に取り組むべき領域と業務分野を以下のとおり提示しました。

  • 適応性:アジリティ、変更管理、マイクロサービス、仮想化
  • ゼロ・オペレーション:人工知能(AI)、接続性、バーチャルアシスタント、事業成果、ITモダナイゼーション
  • ユーザーエクスペリエンス:マルチデバイス対応、高度パーソナライゼーション、ユーザーインターフェース、ブランディング
  • Anytime Anywhereアクセス:オムニチャネル展開、ソーシャルメディア、ネットワーキング、APIマネジメント
  • セキュリティ/コンプライアンス:薬事規制関連、本人確認、アクセス管理、コグニティブ・セキュリティ
  • スマートビジネスプロセス:設定可能なビジネスルール、アプリケーションソーシング、ビジネスイノベーション
  • インテリジェント・アナリティクス:記述的アナリティクス、診断的アナリティクス、予測的アナリティクス、処方的アナリティクス

同社のデジタル成熟度 ならび ITポートフォリオ/プロセス/アプリケーションの準備性を評価し、そのスコアをレーダーチャートにして提示しました(図3および次ページ図4を参照)。

 

まとめ

当社は、デジタル・トランスフォーメーションに乗り出そうという企業に対し、まずIT部門と業務部門の環境(レガシーシステムやプロセス支援バックエンドシステムなど)のアセスメントから着手することをご提案します。同様に、デジタル・イニシアティブに向けたトップダウン・アプローチの採用も推奨しています。本アプローチは、顧客体験に効果をもたらすビジネスプロセスと事業目標を考慮した上でアプリケーションとインフラ構成要素を特定し、両者の整合性を確保しようというものです。また各業界で求められる要件を割り出すには、デジタル・レディネス・インデックスの作成が不可欠です。イニシアティブの目的を裏付けるデジタル・トランスフォーメーション・ロードマップも、極めて有益な情報であると同時にこのイニシアティブを軌道に乗せる一助となるでしょう。

著者紹介

Ilanko Kumaresan
アプリケーション・バリュー・マネジメント事業部 グローバルマーケット統括本部長

当社シニアバイスプレジデント 兼 アプリケーション・バリュー・マネジメント(AVM)事業部のグローバルマーケット統括本部長。現在当社が資金を投入しているオートメーション、プラットフォーム、アプリケーション、ならび各業界のビジネスプロセスに関する幅広いノウハウを駆使し、アプリケーション管理分野の標準化・近代化のレベルを向上させるべく得意先企業を支援。PSG カレッジ・オブ・テクノロジー (インド・コーヤンブットゥール)工学部卒。その他さまざまな業界の資格認定を取得。

Saritha Panapparambil Abubacker
アプリケーション・バリュー・マネジメント 技術部長

当社アプリケーション・バリュー・マネジメント(AVM)ラボの統括責任者。オフショア管理、デリバリ管理、ビジネスコンサルティング、および次世代AVMといったIT業務分野で20年以上の経験。

Anand Iyer
アプリケーション・バリュー・マネジメント ビジネスディベロップメント アソシエイト・ディレクタ

当社アプリケーション・バリュー・マネジメント(AVM) 技術部門内のクライアント・オフィスを統括。サービスデリバリ、プロセス/ITILコンサルティング、ビジネスディベロップメント、AVMソリューション構築などの分野で18年の経験。

脚注
1   ビジネス成果に重点を置くデジタルビジネスサービスこそ成功の鍵 - 2017年3月ガートナー社リサーチ
https://www.gartner.com/doc/3651117/digital-business-service-success-driven