Digital 2.0がもたらすバンキングビジネス変革の波

AI、ブロックチェーン、IoT、RPA、オープンバンキングをはじめとする最新テクノロジーを余すことなく利用することにより、ノンバンクの競合も狙う、より高い柔軟性を備えた顧客重視の未来型バンキングを実現します。

はじめに

ここ数年、私たちが目の当たりにしてきたように、デジタル技術の波が銀行業務全体に変化をもたらそうとしています。ソーシャルメディアとモバイル技術は顧客との関わり方を一変させ、集められた膨大なデータの意味を分析することによって、顧客一人ひとりに合わせたサービスを可能にしました。一方、クラウド技術は「設備投資重視モデル」から「より柔軟性のある設備運用重視モデル」へとコンピューティング・パラダイムをシフトさせ、その結果、サードパーティのプラットフォームを用いた多種多様な “Business Process as a Service”を実現しています。

今、壊的イノベーションの第二の波、あるいはDigital 2.0と呼ばれる技術的変革が、さらなる重大な変化をもたらそうとしています。今回、Digital 2.0の技術としてとりあげられるのは、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)、人工知能(AI)、IoT機器、ブロックチェーン分散型台帳、シェアード・インフラストラクチャ、そしてアプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)を備えたオープンバンキング・プラットフォームなどです。こうしたテクノロジーが銀行業界に力を与え、来るべき未来の金融事業へ向けて、その運営方法は一新されることになるでしょう。

今、Digital 2.0を形成するこれらの技術が成熟していく過程で、金融機関はその価値を見出そうとしている段階と言えます。こうした金融機関は金融サービスバリューチェーン全体で新たな価値を創出しようとしています。たとえばAI主導のロボアドバイザリによる運用資産は、世界全体で2020年までに総額8兆ドルに達すると試算されており、1) 2016年の一年間に、ブロックチェーン事業のスタートアップ各社が呼び込んだ投資額総額5億ドルにのぼっています。2)

とりわけ新興の銀行やフィンテック企業があらゆる銀行業務分野への進出を加速していることを考えると、こうした技術が商品化され、デジタルに対応したサービスの需要が高まるにつれて、銀行業界は未曾有のディスラプション(破壊的技術革新)を迎えることになるでしょう。その結果として誕生する「未来型銀行」は、次のような特性と役割を持つと考えられます。

顧客一人ひとりに合わせたカスタマージャーニーのオーケストレーター: 金融機関は各顧客に包括的なソリューションを提供し、あらゆるタッチポイントで各顧客の望むものを抽出し、最適な顧客体験を創出することが求められます。

バンキングエコシステムにおけるサービスのスマートアグリゲーター: 金融商品・サービスを一から開発するのではなく、進化するバンキングエコシステムの中で利用可能なサービスを活用すること求められます。

プラットフォームベースの金融商品・サービスのプロバイダー: 事業分野全般に対応可能なプラットフォームを活用することで、開発プロセスの高速化、事業運営のアジリティの向上、デプロイ・統合のスピードアップを促進します。

フロントオフィスからバックオフィスまでデジタル技術に支えられたリーン・オペレーター: スマート製品/サービスを開発することによってイノベーションに必要な予算や人員を削減すると同時に、従来型業務の運営にかかる費用の削減が求められます。

ビジネス機会をとらえるデータ分析を行うプロセッサー: ビッグデータを「Thick Data」(民俗学的データや人間行動学的データ)と融合することによって、顧客グループを詳細に細分化し、顧客の意図やニーズを明確にします。

オンデマンド・サービスを提供するアジャイル・サービスユニット: 金融機関はこれまで利用してきたオンプレミス・システムからの脱却を余儀なくされ、クラウドを活用したSoftware-as-a-Serviceの提供へとシフトしていくことになります。アジリティの強化、柔軟性の向上、総所有コスト(TCO) 削減、およびプロビジョニングの高速化が実現されるでしょう。

Digital 2.0は、金融機関によるデジタル化への取り組みを大きく後押しできる可能性を秘めています。Digital 2.0を構成する技術が銀行それ自体に混乱をきたすおそれもある反面、こうした多種多様なアイディアを融合することで未来型銀行が実現されると考えられます。たとえば、 AIが実現する人間に近いナチュラルユーザーインターフェースによる顧客獲得プロセス、ブロックチェーンを経由したリアルタイムの本人確認 (KYC)プロセス、RPAを利用したアカウント・プロビジョニングなどです。しかしながら、次のような現実的な課題も認識しておかなければなりません。

AI/RPA - ガバナンス・信用・風評に対するリスクをもたらすことが考えられます。
IoT - 個人情報の流出、デバイスへのスパム行為、ハッキングなどの脅威がセキュリティやプライバシーの問題に多大な影響を与える可能性があります。
ブロックチェーン - 「信用できる仲介者」という従来型バンキングモデルの転換を意味しますが、拡張性やパフォーマンスの面で新たな問題を生み出し、 これまでの競合他社とより密接に連携してスケールメリットを確立することが求められます。これに加えて、分散化ネットワークの導入によって安定した収益モデルが損なわれるおそれもあります。このため、既存のシステムをシェアード・インフラストラクチャや分散型台帳エコシステムと連携、統合するには多大な投資が必要となるでしょう。

本書は、新たに誕生したDigital 2.0の世界の価値を探求する上で、銀行が注目すべき重要な考慮事項について考察します。 また、さまざまなDigital 2.0コンセプトを組み合わせて最大の価値を引き出すユースケース作成のアプローチを提案します。さらに、Digital 2.0運用モデルに関する当社の考え方をご紹介しながら、スマート・コラボレーションへの注力、デジタル技術の全面的統合、そしてプラットフォーム・シンキング(思考法)の採用を通して、銀行が乗り越えなければならない重要な緊急課題についても概説します。