「デジタル戦略」成功の鍵はグローバル化推進にあり 最適なアプローチ方法とは?

成長の鈍化した国内市場から、日本企業が新興国市場へとグローバル化を推進するための鍵は、デジタル化を迅速かつ効果的に推進することにあると、コグニザントジャパンの竹内友章氏はいう。

成熟する日本市場において望ましいデジタル化とは

7 月27 日、コグニザントジャパン代表取締役の竹内友章氏が、D3 セッションに登壇した。前半では、成長が鈍化する日本市場の現状と日本企業にとって望ましいデジタル化のあり方を説明した。後半ではそれを踏まえ、コグニザントジャパンによるデジタル化支援アプローチを紹介した。

コグニザントジャパン株式会社 代表取締役社長 竹内友章氏

コグニザントジャパン株式会社 代表取締役社長
竹内友章氏

まず竹内氏は、デジタル化を「最新のデジタル・テクノロジーを駆使して既存のビジネス環境を激しく揺さぶる動き」と特徴づけた。データアナリティクスを用いたサービス・製品の迅速な開発や市場への導入、人工知能や自動化による複雑な業務の効率化など、従来のビジネスモデルを激変させうるテクノロジーと捉えている。そして「デジタル化推進を主導するのはアメリカを始めとする海外企業であり、日本企業ではない」と指摘。

その上で、今後の日本市場を説明するために示したのが、日本の人口動態だ。国土交通省の統計によれば、2010 年時点で 1 億 2806 万人を数える日本の人口は、2050 年には約 9700 万人、2100 年には約 5000万人へと激減すると推測されるという。続いて、日本とインドの人口構成比が示された。少子高齢化が進む日本に対し、インドは若年層が多く、年齢が進むに連れて総人口に占める割合が減っていく。逆に日本は今後、減少する一方の人口に、高齢者の占める割合が増えていくと推測されている。

また新興国では若者が金を持ち、生活の質向上のための購買意欲が高いが、日本では給与所得は減り続ける傾向にあり、若者の消費購買力は高くない。「日本国内では、デジタル化の影響を大きく受ける若者の経済力が弱い」と指摘する。さらに竹内氏は、GDP の推移を他国と比較すると、現在世界3位の日本は、10 年以内にインドに抜かれ、21 世紀末にはナイジェリアにも抜かれるとする見方があると説明する。

デジタル化によりビジネスモデルが激変する例として、インドでの銀行口座開設事情が紹介された。竹内氏によれば、インドでは数年前まで銀行口座を持つ人間は 3 人に 1 人程度であったが、現在は 2 人に1人に急増しているという。竹内氏は、その推進力となったのが、手軽に口座開設ができるスマートフォンの普及にあると見る。翻って日本では、既にほぼ 100%の人が複数の銀行口座を持っており、デジタル化によるインパクトがインドと同じ様に起こらないであろうことは想像に難くない。もちろん日本企業もデジタル化には強い関心を寄せているが、「日本企業のテーマは複雑かつ狭い範囲であり、ROI(投資対効果)が小さい」と竹内氏は指摘する。つまり、先の例ならインドでは「銀行口座の開設を促進する」というシンプルなテーマを設定でき、デジタル活用による ROIも大きいが、すでに成熟した日本市場においては限定的にならざるを得ないとの見解なのだ。

これにはデジタル化の進行するスピードの差も関係する。たとえば電話普及において、日本では約 150 年かけて据え付けの固定電話からスマートフォンへと至ったが、新興国ではその経過を経ることなく、いきなりスマートフォンを手にすることになる。竹内氏の言うように、新興国市場においては「先進国 150 年の蓄積は必要ない」のだ。減少する人口におけるデジタル化の影響を大きく受ける若年層の縮小、GDPや若者の消費購買力の低下といった日本市場を取り巻く厳しい現状、そして日本と逆の様相を呈する新興国市場の活況を踏まえ、竹内氏は「日本企業のデジタル化は、グローバルな視点で推進してこそ成長の原動力となる」と提言した。

「FinTech」に見るコグニザントのデジタル化支援

セッション後半では、この提言に関して「コグニザント」の概要やデジタル化推進のアプローチ手法などが紹介された。同社は全世界35 の国と地域に営業拠点を持ち、従業員数は約23万人。重点分野を金融、ライフサイエンスおよび製造業界に置き、企業情報管理や予測分析、データサイエンスなどのソリューションサービスを提供。デジタルマーケティング部門だけでも世界10 か国に営業拠点を持ち、4200 人以上が携わっている。

ここで、同社の企業のデジタル化支援のためのアプローチ手法が映像で紹介された。その詳細は、具体事例として取り上げられた「FinTech」で解説したい。

「FinTech」とは、「Finance」+「Technology」をかけ合わせた造語である。竹内氏によれば、米国を始めとした海外でさまざまなスマートデバイスが普及しており、それらを活用した革新的な金融サービスを提供する企業が増加しつつあるという。そして「金融業以外の業界を巻き込み、金融業のあり方を変える可能性がある」と指摘する。

同社独自の FinTech 標準導入プロセスは、以下の4段階で構成される。
1. Think Big
制約を取り除き、大きな枠組みの中で様々な可能性を協議する
2. Start Small
アイデアを絞り込む
3. Learn Fast
実証実験・効果測定を繰り返す
4. Scale Quickly
一気に市場展開をする
全世界のコグニザントグループには、5万人を超える金融業務スペシャリストやテクノロジーアーキテクトなどのエキスパートが在籍。また特に「ブロックチェーン」分野では、既に蓄積しているノウハウ、海外事例、知的所有権などを提供することで、顧客が一から構築する手間を省き、プロジェクトのスピードを加速させられるという。また多国籍な人材を擁しつつ、国内でサポート窓口や契約を一本化できることは、ビジネスレベルでの英語使用に不安のある日本企業にとって大きなメリットといえるだろう。

竹内氏は同社の FinTech アプローチ手法が評価された例として、「みずほファイナンシャルグループ」のブロックチェーンプロジェクトへの参画を挙げた。標準化プロセスを持ち、膨大な専門家を擁し、さまざまなノウハウや豊富な海外事例経験を有していることが評価された理由だと竹内氏は語る。

もうひとつの事例として、同社が「花王」の海外におけるデジタルマーケティングプロジェクトを担当し、デジタル化を推進するプロセスが紹介された。「花王」は中期経営計画において、海外市場での売上を今後の5年間で 35%から 50%へと拡大することを目指している。「花王」の主力製品がマスマーケットを対象としたものであることを考えれば、企業成長の原動力は海外市場にあるという経営判断は現実的なものといえるだろう。このように、成熟した日本市場からより魅力的なマーケットを探してグローバルに目を向けることで成長につなげるという姿勢は、竹内氏が今セッションで一貫して強調してきたことだ。その際、デジタル化で先行する強敵が存在する海外市場においては、デジタルマーケティングへの効果的な注力が必要不可欠となる。「花王」はどの地域にも共通するプラットフォームを構築したうえに、各地域に根ざしたサービスを積み重ねるデジタルマーケティング戦略をとっている。戦略実現のために、同社のデジタル化推進プロセスを実践しているという。

このように日本市場に閉塞感を覚える企業にとっては、竹内氏のグローバルな視点でのデジタル化という提言は、有効な打開策となりえる可能性を秘めている。今後の日本市場の動向を踏まえ、さらなる展開に注目していきたい。

※日経ビッグデータ2016年9月号より抜粋

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